ジェロントロジストを求めて各分野の先駆者に独自の視点でインタビュー

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更新日 2015-08-30 | 作成日 2008-06-12

研究探訪 VOL.4

ジェロントロジストを求め各分野の先駆者に、室長が独自の視点でインタビュー。
第4回目は赤井 弘さん

新・センチュリアン
世界的野蚕の研究者
赤井 弘 博士

電子顕微鏡に魅せられてこの世界へ

PB061453.JPG赤井弘先生は現在78歳。非常に元気で、世界中を一人で旅することもしばしばである。京都工芸繊維大学の繊維学部を卒業し、電子顕微鏡によって見られる世界(今で言うナノ世界)にあこがれてこの研究世界に入られたという。卒業後、農水省蚕糸試験場、蚕糸昆虫農業技術研究所において33年間研究生活を送り、現在、国際野蚕学会会長、日本野蚕学会会長、東京農業大学客員教授を務める、この分野の世界的な研究者である。この功績を認められ、チェコ科学アカデミーのメンデル記念賞ゴールドメタル、日本蚕糸学会賞、日本農学賞、などなど数々の賞を得ている。また、米国オハイオ州ウェスタンリザーブ大学研究院の時はショウジョウバエ脳がん細胞内の新ウイルスを発見し米国サイエンス誌に掲載された。

世界の野蚕を研究して世界中を飛び回る

家蚕シルクと野蚕シルクの違いは、前者は農家の養蚕室で桑の葉で飼うカイコの繭からできる生糸のことで、後者は野外で昆虫が自然につくるもの、くぬぎ林に作られるグリーンの美しいテンサンの繭もシルクの仲間で野蚕と呼ばれるもののひとつ。
地球上には繭を作る野生の絹糸昆虫が多数生息し、カイコよりも大型の繭を産出するものも少なくない。代表的な野蚕としては、日本のテンサン(天蚕)、中国のサクサン、インドのタサールサン、ムガサン、エリサンなど、世界中に生息している。これらの絹糸昆虫のシルクは、生糸または紬糸として古くから人間の衣料に使われていた。

インドネシアに黄金の繭を作る野蚕(クリキュラ)を求めて

先生が興味も持つ野蚕にインドネシアのクリキュラがある。これは美しい黄金の繭を作るドンドンと呼ばれる虫である。その分布は広く東南アジア全域にある。クリキュラの繭は金箔そのものの色調を呈した黄金繭である。これを将来的に高級衣料や工芸品に利用できれば、インドネシアでは害虫とみられているカリキュラが商品として産業の発展にも寄与できると先生は考えているという。

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クリキュラの繭を広げて生成したもの

野生の蚕飼育を通じて開発途上国の村おこしに奮闘

赤井先生の最大のテーマは、野蚕の飼育を通じ、生態系を壊さず、開発途上国の村おこし、産業おこしをすることである。
近代技術や経済原則を駆使して、開発途上国の支援する手法は、いま曲がり角に来ている。自然の破壊が人類に害を及ぼすことは、すでに自明のことである。また、開発途上国に住民達の生活文化を破壊するような従来の手法も長続きしない。赤井先生が考えたのは、自然に生息する野蚕を自然に飼育し生産品を生み出す仕組みを作ることである。すでに、中国の大連、インドネシアなどにおいてプロジェクトが進行中であり、さらに今後もいくつかのプロジェクトを起こす計画であるという。

生涯現役の研究者として

先生の元気の下は、「生涯研究者」としての意識で、これは年齢にかかわらず生きがいとしてやることであるとおっしゃっておられる。
100歳まで研究を続けていくつもりと、笑いながらお話しされた。
「新・センチュリアン」である。

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赤井 弘
東京農業大学客員教授
国際野蚕学会会長
日本野蚕学会会長


京都工芸繊維大学繊維学部卒業
九州大学農学博士号取得

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